研究内容

①葉緑体光定位運動の改変による植物の生長促進

 

 光合成の場である葉緑体は、周囲の光環境に応じて細胞内の局在を変化させます(動画1, 東京都立大学和田博士提供)。光に依存した葉緑体の細胞内局在変化は葉緑体光定位運動と呼ばれます。葉緑体は強光の下では、光を避ける為に細胞の縁に移動します(逃避反応)。それに対して、弱光の下では、葉緑体は光の下に集まります(集合反応)(図1)。光に依存した葉緑体の局在変化は、葉緑体光定位運動と呼ばれています。

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図1光に依存した葉緑体の局在変化

 葉緑体の逃避反応を欠く変異株は、強光の下で重大な光阻害を生じることから、逃避反応の重要性は明らかにされています(Kasahara et al., 2002 Nature)。それに対して、葉緑体集合反応の現象自体は1世紀以上前に発見されていましたが、その重要性は実証されていませんでした。我々は、共同研究者の方と一緒に、様々な変異体を利用して、表面に配置する葉緑体の割合をコントロールすることにより、葉緑体が細胞表面に集合する割合に比例して、葉全体での光の吸収量が増大し、多くの光を光合成に利用できることを明らかにしました。さらに、常に多くの葉緑体を細胞上面に集合させた変異株は、通常の植物に比べて同じ光条件下でも植物体が1.5倍以上も大きくなることを発見しました(図2:Gotoh et al. 2018 Plant Physiol)。本研究成果は、NHK福岡のニュースや新聞等のメディアに取り上げられました。

 

 現在、葉緑体運動を改変することにより、様々な植物の生産性を自由自在に制御することを目指して、企業等と協力して研究を行っています。

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​②光受容体フォトトロピンに関する研究 

​ 植物特有の青色光受容体であるフォトトロピンは、光屈性、葉緑体運動、気孔開口、葉の平滑化などの光応答を誘導することが分かっています(Christie 2007 Annu Rev Plant Biol)。細胞膜に加えて、葉緑体外膜やゴルジ体、細胞質に局在します(Kong et al. 2013 Plant Cell Physiol)。過去の知見から、細胞膜に局在するフォトトロピンだけでいくつかの青色光応答を誘導できることは分かっています(Preuten et al., 2015 New Phytol)。しかしながら、葉緑体外膜などに局在するフォトトロピンの機能については、分かっていません。そこで、我々の研究グループは、人工的にフォトトロピンの細胞内局在を葉緑体外膜と細胞膜のみに限定した形質転換植物を作出し、機能解析を行っています。

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​図2 フォトトロピンの細胞内局在を改変した形質転換植物
​③野外に生育する植物の光応答

 

 モデル植物(Arabidopsis thaliana)の変異株を用いた解析により、青色光依存的な光応答は、植物の生長において重要な役割を担うことが明らかになっています。モデル植物を用いた解析は、厳密に管理され、環境の変化がほとんどない状況で行われています。それでは、時々刻々と環境が変化する野外に生育する植物において、青色光依存的な光応答はどのようになっているのでしょうか?

 私たちは上記の実験室内での研究に加えて、実際の野外に生育する植物を用いた解析も行っています。

④その他の研究​
・イネ(Oryza属)の葉緑体光定位運動 (Kihara et al. 2020 Journal of Plant Research) 
・CAM植物の青色光依存的な気孔開口 (Gotoh et al. 2019 Journal of Experimental Botany)
​など。